75Hzの読書ノート

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読書メモ:誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性-

 

誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性

誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性

 

 

Google検索データ、Pornhub(世界最大のポルノサイト)の閲覧データを解析し実証した著者による本。

ベースはビッグデータ解析についての本で、他の研究も豊富に紹介されている。

アメリカに暗然と存在する人種差別について明かしたり、中絶を厳しくする法律が施行されると非合法な中絶数が増えることを示すなど、かなりヘヴィな内容も含まれるが、著者のユーモアでそこまで重くならずに読めた。

途中でちょっと非モテっぽい自虐ネタを入れたりと、アメリカのギークの雰囲気が少し伝わってくる。

結局ビッグデータで明かされるのは「ああ、そう言われてみればそうだよね」という内容も多い。
例えばセックスレスについて検索するのは女性が多い。直感には反しているかもしれないが、妻とセックスレスの夫に比べ、妻のほうが「他所で」解決するのは困難だから、それは検索数も増えるだろう。とも考えられる。

Pornhubのデータで筆者にとって「衝撃的」であったのは、男性の欲求対象として「女装した男」(検索順位77番目)、「おばあちゃん」(110番目)などがあること。そして女性によるPornhubの検索の25%は、女性がかぶる苦痛や恥辱を強調した動画であり、5%はどう有為を伴わないセックスの動画を(同サイトでは禁止されているにもかかわらず)探している。ということであった。

これは日本人にとってみれば日本の男の娘や、レディコミック、少女マンガで描かれる性ファンタジーを見れば一目瞭然でもあるだろう。

 

 

ビッグデータで明かされるのは、社会の本音であり、露悪的だと感じる人もいるだろうが、それでもこれからの時代はデータを使いながら少しずつ前進していくしかない。オバマによる道徳心や寛容さを説く演説は、各社新聞紙に絶賛されたが、その裏では人種差別的な検索が増えていた。一方で、多くのアメリカ系イスラム教徒は、スポーツヒーローであり愛国的な兵士として国を守っているという演説の後には、イスラム教徒に肯定的なキーワードをつけて検索されることが増えた、というデータは示唆に富む。

 

本の最後の章ではビッグデータ解析があまり有用でない分野(投資など)や、危険な使われ方(社会スコアなど)についても触れられており、バランスがとれた内容になっている。あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠 にも通じる内容であり、それだけビッグデータ解析がコモディティ化してきたということでもある。

 

あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠

あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠

 

 AI・ビッグデータの使い方について「数学破壊兵器(Weapons of Math Destruction)」という造語で警鐘を鳴らす本(大量破壊兵器massと数学mathをかけている)。当然だが若干内容がネガティブに寄っている。